不動産は経済的価値も高く、しかも抵当権などの権利の目的となるため、自然と権利関係が絡み合い、その実態は当事者以外の者には把握しにくくなりがちです。 それでは健全な不動産取引は成り立ちません。
そこで、権利関係を一般に公開し、必要な者にいつでも情報を与える公示制度が設けられました。 それが不動産の登記制度です。
この制度は、不動産登記法という法律に基づいて運用されています。 不動産登記とは、登記所に備え付けられている帳簿に、不動産の物理的な現況と権利の動きを記載することをいいます。
あるいは、記載された内容そのものをいう場合もあります。 そして、この帳簿のことを不動産登記簿といいます。
民法は、不動産を「土地及びその定着物」と定義しています。 定着物とは、建築、橋梁、鉄塔、門柱、植木などをいいます。
このうち、建物は独立した不動産とされますが、その他のものは定着した土地と一体のものとして取り扱われます。 要するに、不動産登記法の上での不動産とは、「土地」と「建物」ということになります。

では、土地とは何でしょう。 土地は人為的に区画された一定の陸地部分をいい、正当な範囲に限って所有権はその上下(空中地下)に及びます。
一方、建物とは「屋根と周壁またはこれに類するものを持ち、土地に定着した建造物であって、本来の用途に供し得る状態にあるもの」だとされています。 権利を主張するためには登記が必要民法では、物権の移転や設定、つまり、土地に抵当権をつけたり、その所有権を他人に売ったりするには、債権者と債務者、売主と買主などの当事者の意思表示だけでできるとしています。
しかし、それを第三者である他人に対抗(主張)するためには、登記が必要になります。 例えば、Aさんが所有している不動産を、Bさん、Cさんに二重に売買して、Cさんに所有権移転登記をしたときには、Bさんはたとえ先に売買契約を結んでいたとしても、すでに登記を受けている第三者であるCさんに対しては、自分の所有権を主張することはできないのです。
このことは、民法(第一七七条)では、「不動産についての物権の動きを第三者(他人)に対抗(主張)するためには登記をしなければならない」と書かれています。 つまり、物権変動をめぐっての第三者との争いでは、登記の有無だけが問題となり、第三者の悪意や善意は問わないことになっています。
悪意というのは、第二の取得者(Cさん)が第一の取得者(Bさん)がいるという事実を知っていても、という意味です。 ただし、CさんがBさんの登記を妨害したり、Bさん名義の登記に協力する責任を有する立場の者であれば、「背信的悪意者」として登記の効力を主張できなくなります。
このような登記の効力のことを「登記の対抗力」と呼んでいます。 真実の権利者の保護が優先される例えば、Aさんがある物を持っていて、あたかもその所有者のように見えるのに、実際はBさんから借りていたにすぎないという場合を思い浮かべてください。
第三者であるCさんは、Aさんを所有者であると信じてそれを買い取ったものとしましょう。 そして、常識的にはそう信じていても、別に不思議ではなかったという場面を想定してみてください。

取引は日々複雑化しているにもかかわらず、その反面、今日の経済社会は取引の迅速化を絶えず要求しています。 自然と事前の調査時間は限られてきます。
取引の安全を図るためには、相手方の権利関係を、外見上の事実で信頼した者を保護する必要が生じてきます。 そのため、外見上の事実を相手方の真実の権利関係だと信じた者を保護し、これに真実の権利関係が存在したときと同様な、法律上の効果を認めようとする原則が採用されることになりました。
この原則のことを「公信の原則」といいます。 わが国でも、民法は動産の占有についてはこの原則を採用しています。
動産を占有している者を所有者だと誤信して、動産を買い受けた者には、その所有権を取得させる「即時取得」の制度が設けられています。 ところが、肝心の不動産の公示制度である「登記」については、公信の原則は採用されていないのです。
取引の安全よりも、真実の権利者の保護が優先されているのです。 取引を信頼して、無権利者から不動産を買い取っても、所有権を取得したことにはならないのです。
登記できる九つの権利地役権不動産登記法の上で、登記できるとされている自分の土地のために、他人の土地を利用する権利です。 例えば、自分の土地に入るために他人の所有権土地を通行する場合などです。
物を完全に支配し、利用することのできる権利先取特権です。 つまり、自分の持ち物を自由に使用したり、法律で定められた特別の原因で発生した債権を収益したり、処分したりすることができるという持つ者が、債務者の一定の財産に対して他の債権ことです。
者に先立って支払いを受けることのできる権利の地上権ことです。 他人の土地に建物を建てたり、竹や木を植えて例えば、不動産工事の先取特権であれば、建築林業を営むために、その土地を使用する権利です。
屋さんが着工前に予算額を登記しておけば、他の永小作権債権者に優先して工事代金を手にすることができ他人の土地で耕作したり、牧畜をしたりするために、その土地を利用する権利です。 ここでの耕質権作とは、農業や果樹栽培をすることをいいます。

市中の質屋さんでおなじみの権利です。 自分の債権の担保として、債務者または第三者から受け取った物(質草)を手元に置いておいて、その物から他の債権者に先立って支払いを受けることのできる権利です。
債権者は担保として、債務者または第三者から一定の物をとりますが、その提供物を手元においてそのまま使用させながら(ここが質権との違いです)、債務者の返済がないときは、その物から他の債権者に先立って支払いを受けることのできる権利です。 なお、抵当権は、債権の範囲と最高限度額(極度額)をあらかじめ決めておけば、それを設定するときには、まだ発生時期や内容、金額などがはっきりしない債権も担保することができます。
このような特殊な抵当権のことを根抵当権といいます。 根抵当権が登記の対象となることは言うまでもありません。
他人の物を借りて、それを使用、収益する権利です。 他人の土地で岩石や土砂を採取する権利です。
以上九種の権利のほかに、不動産の売主が売買契約と同時につけた特約から生じる「買戻権」も登記することができます。 では、前項であげた九つの権利のどのような状態が登記できるのでしょうか。
不動産登記法によると、それらの権利についての「設定、保存、移転、変更、処分の制限、消滅」の六種の態様が登記できることになっています。 設定不動産の所有権やそれ以外の権利の上に、当事者聞の設定契約で新しい権利を創設することです。
保存初めてする権利の登記で、当事者聞の設定契約によらないものをいいます。 具体的には、所有権、先取特権の保存がそれに該当します。
移転ある者に属していた権利が他の者に移ることをいいます。 変更権利の内容が変わることをいいます。
処分の制限所有権やその他の権利について、権利者が自由に処分することを制限することをいいます。

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